S様の住まいを見ると、すごくシンプルに暮らされている印象がありますね。
リビングに大きな収納をつくったので、そこにとりあえず仕舞っています。あまり、あちこちにモノを置きたくないというのもありますね。ちょうど1年くらいここに住んで、生活品もちょっとずつは増えてるんですけど、気に入ったもの以外は持ちたくないってのいうのもあって。キッチン回りの収納にもまだ余裕がありますね。
マンションリノベーションという選択は当初からあったのですか?
2011年に仕事の都合で郡山から仙台へやってきました。賃貸住まいから、そろそろ持ち家かな、と考え始めた時に、仙台市内で戸建て住宅を建てることには若干抵抗がありました。土地を購入するところからのスタートですから、その場合、やはり郊外の可能性が高くなります。妻の仕事も仙台駅周辺で、公共交通機関の利便性が高いので、ウチは車を2台持つ必要もない。そこでマンションという選択肢が出てきました。 とは言え、仙台で新築のマンションは高い。戸建並みだな、という印象を持っていました。それであれば、安価中古物件(マンション)を買って、自由に直したほうがイイ、と思ったんです。
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元は和室の部分に相当するリビング。大容量の”元押入れ”収納があればこそのスマートな暮らしぶり。
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壁付けだったキッチンを対面式に。元々持っていたチェストにもう1台を加えてキッチン収納兼作業台に。まるで備え付けだったかのように見間違う。
ご自身で物件探しをされたのですよね。希望物件の条件にはどんなものがあったのですか?
物件探しには半年かかりました。空き物件はたくさん見ましたね。不動産屋さんにも協力してもらったりして。希望は間取りが70㎡ぐらい。子供が1人いたとして、2~3人で住むのにちょうど良いサイズが希望でした。あとは既存の状態(間取り)を見て、あまり大袈裟なテコ入れをせず、自分たちの理想のリノベーションがどう実現できるか、想像を膨らませて。
これは個人的な判断基準だったんですが、物件にもリノベ向きな物件とそうでない物件があって…。築30年ぐらいで目安をつけていて。築30年弱ぐらいだと、ちょうど「新耐震基準法」的にもクリアできるんです。 築年が浅い新しい物件は「できあがっちゃった感」があるんですよね。自分たちのアイデアで、空間に工夫を加える楽しさがないって言うか…。単にキレイにするだけなら、苦労して物件を探したり、壁をぶち抜いたりする必要もない(笑)。
そして立地。もしかしたら、また転勤があるかもしれないというのを視野に入れて。貸すにしても、売るにしても、街中であれば住宅としての資産価値も高いかな、と。
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天井板を外し、コンクリートの「現し」に。同時に天井高も確保。コンクリート地をそのまま見せる方法もあるが、重たい感じにはしたくなかった。
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間取りはご主人が中心になって進めたが、空間のアクセントとなる装飾パーツの選定に関しては奥様も積極的に参加。
マンションリノベーションは楽しめましたか?
リノベを実施するにしても、いろんな条件があると思うんです。ましてやマンションですしね。家族構成やライフスタイルにも関わってくるし。例えば、キッチンは場所が変わったために、排水勾配を確保する必要があって、床が1段あがっています。これだって、いいねって言ってくれる人もいれば、ユニバーサルじゃないよね…って言う人だっていると思う。できることとできないことはあって、条件の範囲内で、どこまで自分たちの思い描くものに近づけられるかな、って考えることを楽しめないと。
好きな家具を揃えたり、花を飾ったり、小物をディスプレイしたり。自分たちの居心地のイイ空間を維持することも含めてリノベなのかな、って思います。私たちは2人とも「住まい」への関心が深くて、暮らし方に思い描くものがあったから、この方法が選択できたんじゃないかな。
コンセントやスイッチプレートを自分たちで選んだり、壁の塗装をしたり、住まいをカタチづくっていく工程に参加できたことはとても楽しかったですよ。
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キッチンカウンター越しに奥様のつくる料理が運ばれるのを待つ時間がお好きだと言うご主人。
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べランダ前には植物を置くスペースを確保。タイルを1枚1枚敷き詰めたもの。間仕切りをせずとも、存在感のある一つの空間に。